ショートドラマ市場が拡大中!企業の活用事例とビジネスモデルを徹底解説

ショートドラマ市場は、TikTokやYouTube Shortsの普及とともに急速に拡大しています。短時間で視聴者の心をつかみ、自然にブランドや商品の魅力を伝えられるのがショートドラマの魅力の一つです。
最近は、多くの企業がショートドラマをマーケティングに活用し始めています。
本記事では、ショートドラマ市場の現状や成長要因に加え、企業の活用事例や収益化の仕組み について詳しく解説します。
ショートドラマを活用した企業プロモーションを検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
ショートドラマ市場の現状と成長要因

TikTokやYouTube Shortsなどで目にする機会が増えているショートドラマは、短い時間で視聴者の心を掴み、商品やブランドの魅力を自然に伝える手法です。
企業のマーケティング戦略では、重要な位置を占めるようになりました。
ここでは、以下の3つのポイントから、ショートドラマ市場の現状と成長要因を解説します。
- ショートドラマの市場規模と成長予測
- 成長を後押しする要因
- 人気ジャンルと視聴傾向
それぞれ詳しく説明します。
ショートドラマの市場規模と成長予測
ショートドラマ市場は、近年、世界規模で急速な成長を遂げています。
Y&H Research社の調査によると、世界のショートドラマ市場規模は、2023年時点で約8,000億円に達し、2029年には約8.8兆円にまで拡大すると予測されています。
参考:YH RESEARCH「縦型ショートドラマの世界市場」
日本国内に目を向けても、その成長は顕著です。
具体的な市場規模のデータは限られているものの、ショートドラマを活用した企業プロモーションの増加や、関連プラットフォームの活況ぶりから、市場が着実に拡大していることがわかります。
日本のテレビCM市場が約1.8兆円、世界の漫画市場が約1.4兆円であることを踏まえると、ショートドラマ市場のポテンシャルの大きさが理解できるでしょう。
特に、中国におけるショートドラマ市場の成長は目覚ましく、2023年には約6兆円に達し、2025年には1兆円を超えるとの予測もあります。
これらのデータからも、ショートドラマが単なる一時的なトレンドではなく、エンターテインメントコンテンツとしての確固たる地位を築きつつあると言えるでしょう。
成長を後押しする要因
ショートドラマ市場が急速に成長しているのは、現代の視聴者のライフスタイル、プラットフォームの変化、コンテンツの質の向上が複合的に作用した結果と言えるでしょう。
ショートドラマが注目される理由は、以下の3つが挙げられます。
- スマホの普及と「すきま時間」の増加
- 縦型動画プラットフォームの戦略転換
- コンテンツの質の向上と多様化
上記の要因を、具体例と一緒に確認していきましょう。
要因 | 具体例 |
---|---|
短時間視聴ニーズの増加 | 通勤・通学中でTikTokのショートドラマを視聴する人が増加 |
プラットフォームの戦略と進化 | YouTube Shortsなどが最大60秒までの動画投稿に対応し、ストーリー性のあるショートドラマが増加 |
視聴者ニーズの高度化 | ショートドラマアプリが登場し、1話課金型の高品質なドラマコンテンツが人気を集める |
上記の要因が複合的に作用した結果、ショートドラマ市場は急速に拡大しています。そして、この成長は今後も続くと予測されます。
人気ジャンルと視聴傾向
ショートドラマ市場が拡大する中で、特定のジャンルや視聴傾向が見られるようになってきました。
具体的に、人気ジャンルと視聴傾向を見ていきましょう。
人気ジャンル | 恋愛家族ドラマ ヒューマンストーリー コメディ |
視聴傾向 | 主に10代から30代のスマートフォンネイティブ世代が中心 通勤・通学中、休憩時間などのスキマ時間に視聴 視聴デバイス(スマホが中心) |
ショートドラマを活用したプロモーションを成功させるには、ターゲット層に適したコンテンツ作りが大切です。
企業がショートドラマを採用する理由
企業がショートドラマをマーケティングに活用するケースが増えているのは、従来の広告手法にはないメリットがあるからです。
ショートドラマの具体的なメリットは、以下のとおりです。
広告感が少ない | 従来の広告と異なり、ストーリーの中で自然にブランドや商品を訴求できる |
感情に訴えかける | 短い時間でも、視聴者の感情を動かすことで、記憶に残りやすくなる |
SNSで拡散されやすい | 面白い、感動するなど、共感を呼ぶコンテンツは、SNSでシェアされやすく、高い拡散効果が期待できる |
費用対効果が見込める | テレビCMと比較すると、制作費を抑えられる場合が多く、費用対効果が高い傾向にある |
上記のメリットを活かし、実際にショートドラマを活用して成果を上げている企業の事例がいくつもあります。
例えば、NTTドコモは「【ごっこ倶楽部】」とタイアップしたショートドラマ『運命のクラス替え』をTikTokで展開しています。学生世代の新規ユーザー獲得を狙い、ドラマ内に自然にスマホを登場させることで、広告感を抑えつつPRに成功しています。
みずほ銀行は「推し活」をテーマにしたショートドラマ『僕の推し』を公開しました。銀行預金のテーマを扱いながらも、視聴者の興味を引くストーリー展開で、広告色を感じさせないプロモーションを実現しています。
さまざまな事例から、ショートドラマは、視聴者に自然な形でブランドメッセージを届け、共感を呼ぶことができる、効果的なマーケティング手法であることがわかるでしょう。
企業によるショートドラマ活用事例

近年、ショートドラマをマーケティングに活用する企業が増加しています。ここでは、実際にショートドラマを活用し、成果を上げている企業の事例を紹介します。
NTTドコモ『運命のクラス替え』
NTTドコモは、ショートドラマを活用したマーケティングで成功を収めている企業の一つです。中でも、TikTokで展開された『運命のクラス替え』は、大きな成果を上げました。
その理由は、人気クリエイターとのタイアップ、Z世代の共感を呼ぶストーリー、そして広告感のない自然なPR展開にあります。
『運命のクラス替え』は、クリエイター集団「【ごっこ倶楽部】」とのタイアップで制作された、全2話完結のショートドラマです。TikTokでの合計再生回数は1500万回を超え、他にも500万回再生を超える作品が多数存在します。
「等身大の青春」をテーマに、学生をターゲットとした本作は「転校生が実は義理の兄妹だった」というマンガのような設定を取り入れ、10代の視聴者の共感を呼びました。
ドラマの中ではNTTドコモのスマホがさりげなく使用されるなど、広告感を排除し、日常に溶け込むようなPR手法がとられています。
競合が多い携帯キャリア業界で、NTTドコモは、TikTokを積極的に活用し、将来の顧客となりうる学生世代への効果的なターゲティングに成功している事例の一つです。
みずほ銀行『僕の推し』
みずほ銀行は、ショートドラマ『僕の推し』を公開し、広告色を感じさせない巧みなプロモーションで注目を集めています。
みずほ銀行の成功の理由は「推し活」をテーマに設定し、銀行預金という意外性のある要素を、ストーリーに自然に溶け込ませた点にあります。
『僕の推し』は、企業とのタイアップで制作されたショートドラマで、公開直後から大きな反響を呼びました。主人公が、稼いだお金を全てつぎ込んでいた「推し」の引退をきっかけに、みずほ銀行にお金を預ける、予測不可能なストーリー展開が特徴です。
Z世代に人気のテーマを扱いながら、一見関連性のない要素を組み合わせ、視聴者の興味を引きつけています。さらに、PR感を全く感じさせない自然な形で、商品・サービス(銀行預金)をストーリーに組み込んでいます。
みずほ銀行の事例は、ショートドラマを活用したプロモーションにおいて、ユーザーに自然な形で訴求するためのヒントを与えてくれる、代表的な成功例と言えるでしょう。
パーソルホールディングス株式会社『代われない者』
パーソルホールディングス株式会社(以下、パーソル)は「働くことの意味」をテーマにしたショートドラマ『代われない者』をTikTokで公開し、大きな反響を呼びました。
パーソルの成功の要因は、視聴者の感情を揺さぶり「次が見たい」と思わせる巧みなストーリー構成と、共感を呼ぶリアルなテーマ設定にあります。
『代われない者』は、総合人材サービス企業であるパーソルが制作したショートドラマで、TikTokでの再生回数は前後編合わせて2,400万回を超えるメガヒットとなりました。
本作は、ストーリーを前後編に分ける構成を採用しています。前編では、視聴者が続きを期待してしまう展開で終わらせ、感情を揺さぶる場面で締めくくることで、自然な形で後編への誘導に成功しました。
「働くこと」をテーマにしたリアルなストーリーは、視聴者の共感を呼び、コメント欄では自身の仕事経験や、将来への不安など、活発な議論が交わされました。
パーソルの事例は、ショートドラマを活用して、視聴者の感情に訴えかけ、深い共感を生み出すことで、企業メッセージを効果的に伝えられることを示しています。
サントリーホールディングス『6%の照れ隠し』
サントリーホールディングス株式会社(以下、サントリー)は、ドン・キホーテとのタイアップによるショートドラマ『6%の照れ隠し』を制作・公開し、Z世代への効果的なプロモーションに成功しています。
サントリーの成功の要因は、Z世代に人気のTikTokerの起用、共感を呼ぶ「宅飲み」シーンの発信、視聴者参加型の企画の実施にあります。
『6%の照れ隠し』は、Z世代向けカクテル「バー・ポームム」の世界観を伝えるために制作されたショートドラマです。人気TikTokerを起用したことで、1作品で400万再生を超えるヒット作も生まれています。
「飲み会を抜け出して飲み直し」「幼馴染との恋の始まり」「大人の女子会」など、日常における“エモい宅飲み”シーンを描いた本作は、Z世代の共感を呼びました。
ユーザーからお酒にまつわるエピソードを募集し、公開する視聴者参加型の企画も実施し、より高いエンゲージメントを獲得しています。
サントリーの事例は、ショートドラマを活用して、ターゲット層(Z世代)の共感を呼ぶコンテンツを発信し、視聴者参加を促すことで、効果的なプロモーションを実現できることを示しています。
カルビー株式会社『あげりこ学園』
カルビー株式会社(以下、カルビー)は、ロングセラー商品「じゃがりこ」のPRを目的としたショートドラマ『あげりこ学園』をTikTokで展開し、Z世代への効果的なアプローチに成功しています。
カルビーの成功の要因は、Z世代に人気のTikTokクリエイターの起用、ターゲット層に響くテーマ設定、「あげりこ」という独自のコンセプトの導入にあります。
『あげりこ学園』は「じゃがりこをプレゼントする」ことを「あげりこ」と称し、女子高生を中心に「あげりこ」体験を楽しんでもらうことを目的に制作されたショートドラマです。
2024年10月時点で10本のドラマが配信され、合計再生回数は約350万回を記録しています。
Z世代へのリーチを確実にするため、Z世代に人気のTikTokクリエイター3名をキャスティングしています。「卒業」をテーマにした作品は、ターゲット層である女子高生の日常に溶け込み、共感を呼びました。
カルビーの事例は、ショートドラマを活用して、ターゲット層に特化したコンテンツを制作し、独自のコンセプトを打ち出すことで、効果的なプロモーションを実現できることを示しています。
ショートドラマの収益化とビジネスモデル

ショートドラマ市場の拡大に伴い、その収益化の仕組みやビジネスモデルにも注目が集まっています。
ここでは、ショートドラマがどのように収益を上げ、ビジネスとして成立しているのか、その詳細を解説します。
ショートドラマの収益化の仕組み
ショートドラマは、主に広告収入と課金モデルによって収益を上げています。収益化の具体的な仕組みをまとめると、以下のとおりです。
広告収入 | 企業タイアップ(企業が制作費を負担し、ショートドラマの中で自社の商品やサービスを宣伝) プラットフォーム広告(YouTubeなどのプラットフォームでショートドラマを配信する際に、動画の再生前や再生中に広告を掲載) |
課金モデル | 視聴課金(ショートドラマ1話ごと、またはシリーズごとに視聴料金を設定) |
その他の収益源 | グッズ販売、イベント開催など |
上記のように収益化の仕組みを組み合わせることで、ショートドラマはビジネスとして成立しています。
また、収益源の多様化も進んでおり、今後の市場拡大を支える要因の一つとなっています。
制作費とコスト感
ショートドラマの制作費は、1話あたり数十万円から数百万円程度が一般的ですが、工夫次第で低コストでの制作も可能です。
制作費に幅がある理由は、以下の要素が影響するためです。
キャスティング | 有名な俳優やインフルエンサーを起用するかどうか |
スタッフ | 監督や脚本家、カメラマンなどの専門スタッフを起用するかどうか |
撮影場所 | スタジオを借りるか、ロケを行うか |
撮影日数 | 撮影にかかる日数 |
編集 | 特殊効果やCGなどを使用するかどうか |
上記のような要素を調整すれば、制作費を抑えることが可能です。
もちろん、低コストで制作する場合でも、ストーリーの質や映像のクオリティを維持する必要があります。しかし、必ずしも高額な制作費をかければ良い作品ができるとは限りません。
大切なのは、予算内で最大限の効果を発揮できる、費用対効果の高いショートドラマを制作することです。
まとめ|市場拡大するショートドラマを活用し企業PRにつなげよう!
本記事では、ショートドラマ市場の現状や成長要因、企業事例、収益化の仕組み、制作費について解説しました。
ショートドラマ市場は、スマホの普及や縦型動画プラットフォームの成長、視聴者ニーズの変化などを背景に、急速に拡大しています。
世界市場では2029年には8.8兆円規模に達すると予測されており、企業にとっては、従来の広告手法に代わる、新たなマーケティングツールとして注目されています。
ショートドラマの人気ジャンルは恋愛や家族ドラマ、サスペンス、ヒューマンストーリー、コメディなどが中心です。視聴傾向としては、10代~30代のスマホネイティブ世代が中心で、スキマ時間にスマホで視聴されています。
NTTドコモ、みずほ銀行、パーソル、サントリー、カルビーなど、多くの企業がショートドラマを活用し、成果を上げています。
制作費は1話あたり数十万円から数百万円程度が一般的ですが、工夫次第で低コスト制作も可能です。
本記事の情報を参考に、ぜひショートドラマを活用したマーケティングを検討してみてはいかがでしょうか。