ショートドラマがバズるのはなぜ?成功事例や作成ポイントを詳しく解説

企業のマーケティングで注目されるショートドラマ。なぜこれほどまでに多くの人の心を掴み、「バズる」のでしょうか。
担当者として、その成功法則を知り、自社の施策でもショートドラマを成功させたいと考えている方も多いかもしれません。
しかし、多くの成功事例の裏側にある「バズる理由」や、成果につながる具体的な作成ポイントを体系的に理解するのは簡単ではないでしょう。
この記事では、その「なぜ?」の疑問に答えるところから始め、具体的な成功事例、バズるための共通ポイント、実践的な作成の流れまで、一つひとつ詳しく解説します。
ショートドラマをバズらせたい、バズる理由やポイントを知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
なぜ今ショートドラマがバズるのか

ショートドラマが、なぜこれほどまでに注目を集め、「バズ」を生み出しているのでしょうか。
これは単なる一過性の流行ではありません。人々の視聴スタイルや、SNSプラットフォームの特性と、ショートドラマが持つ構造が見事に噛み合っているからです。
具体的には、以下の3つの要素が大きく関わっています。
- タイパ重視の視聴スタイル
- TikTokの拡散アルゴリズム
- スマホ特化の縦型画面ドラマ
それぞれの理由を詳しく見ていきましょう。
タイパ重視の視聴スタイル
ショートドラマが支持される理由の一つは、タイムパフォーマンス(タイパ)を重視する現代の視聴スタイルに完全に合致している点です。
情報過多の現代において、特にZ世代を中心に短い時間で効率的に情報を得たり、エンターテイメントを楽しんだりする傾向が強まっています。
1話が1〜3分程度で完結するショートドラマは、移動中や休憩時間といった隙間時間でも気軽に楽しめるため、このニーズに完璧に応えています。
視聴シーンとしては、以下のような場面が考えられます。
- 通勤・通学の電車の中で1〜2話見る
- 昼休みの短い時間で気分転換に視聴する
- 就寝前にサクッとエンタメに触れたい時に見る
長編の映画やドラマのように「見るぞ」と意気込む必要がなく、手軽に物語の世界に没入できるのが大きな魅力です。
現代人のライフスタイルに寄り添ったスタイルが、ショートドラマが多くの人々に受け入れられている根本的な理由と言えるでしょう。
TikTokのアルゴリズム
TikTok独自のアルゴリズムが、ショートドラマに爆発的な拡散力をもたらしています。
TikTokでは、フォロワー数に関係なく、コンテンツの質が高ければ「おすすめ」フィードに表示され、多くのユーザーに届く仕組みになっているからです。
アルゴリズムが特に重視するのが「視聴維持率」と「エンゲージメント(いいね、コメントなど)」です。
ショートドラマは、TikTokのアルゴリズムと非常に相性が良いコンテンツなため、フォロワーが少なくてもバズる可能性があります。
具体的には、以下のような数字がアルゴリズムに関係しています。
視聴維持率 | 続きが気になるストーリー展開で、最後まで視聴されやすい |
エンゲージメント | 登場人物への共感や意外な結末が、コメントやシェアを誘発する |
ループ再生 | 伏線回収のために何度も見返すことで、再生時間が増える |
上記のような要素がアルゴリズムに高く評価され、一夜にして数百万回再生されるような「バズ」が生まれます。
フォロワー数に依存せず、コンテンツの力だけで多くの人にリーチできる点が、ショートドラマの魅力の一つです。
総務省の調査によれば、2021年時点でスマートフォンの世帯保有率は88.6%に達しています。
スマホ特化の縦型画面ドラマ
ショートドラマの多くは、スマートフォンの視聴に最適化された「縦型画面」で制作されています。
現代では、動画などはスマホ視聴をする人が圧倒的に多いからです。

縦型画面は、このスマホを縦に持ったまま、画面いっぱいの没入感で視聴できるため、ユーザーにとっても自然で快適な視聴体験を提供できます。
縦型画面には、横型画面にはない独自の利点があります。
- 画面占有率が高く、視聴者が見やすい
- キャラクターの表情や感情が伝わりやすい
- スマホを持ち替える手間なく、片手で気軽に視聴できる
ユーザーの視聴環境あった縦型画面が、ショートドラマがストレスなく受け入れられる要因につながっています。
ショートドラマでバズらせた成功事例5選

ショートドラマがバズる背景を理解したところで、次は実際に成功を収めた企業の事例を見ていきましょう。
理論だけでなく、具体的な成功例から学ぶことで、自社の施策に応用できる実践的なヒントが見つかります。
今回は、特に参考になる5つの事例を紹介します。
- NTTドコモ|スマホが紡ぐ青春の物語
- 三井住友カード|タイパがテーマの倍速ドラマ
- Canva|ツール活用法を学ぶお仕事ドラマ
- PERSOL|若者の葛藤を描く共感型ドラマ
- カルビー|UGCを誘発する青春あるあるドラマ
それぞれの企業が、どのような戦略で「バズ」を生み出したのか。そのポイントを一つずつ詳しく解説します。
NTTドコモ|スマホが紡ぐ青春の物語
大手通信キャリアであるNTTドコモは、人気クリエイター集団と組み、スマホをテーマにしたショートドラマを制作しました。
このドラマは、高校のクラス替えで揺れる友情や淡い恋心を描いています。その中で、スマホが気持ちを伝えたり、人と人とを繋いだりする、温かいコミュニケーションツールとして効果的に登場します。
商品を売り込むのではなく、共感を呼ぶストーリーを通じてブランドの価値を伝える手法が、多くの視聴者の心を掴みました。
結果として、シリーズ累計で1,500万回を超える再生数を達成し、若年層へのリーチを大きく広げた成功事例です。
三井住友カード|タイパがテーマの倍速ドラマ
三井住友カードは、スマホのタッチ決済サービスの魅力を伝えるため、著名なクリエイターを起用したショートドラマを制作しました。
このドラマは、「タイパ」をテーマに、冒頭から倍速で展開する斬新な演出が特徴です。心温まる物語の中に、サービスの決済シーンが広告感を一切感じさせずに溶け込んでいます。
エンターテイメント性の高い「作品」として作り込むことで、SNS上での話題化とサービス訴求の両立に成功しました。
結果として、再生回数は300万回を突破し、クリック率は通常の数十倍もの高い数値を記録しています。
Canva|ツール活用法を学ぶお仕事ドラマ
デザインツールを提供するCanvaは、ツールの便利な使い方や多様な活用シーンを、シリーズもののショートドラマで紹介しています。
このドラマシリーズの大きな特徴は、意外性のあるキャスティングです。あえて強面の社員や、デザインが苦手そうな人物を主人公に据えることで、視聴者の「自分にもできるかも」などの共感を誘い、ツールの利用ハードルを心理的に下げています。
各エピソードでは、具体的な機能が物語の中で自然に紹介されます。
これにより、視聴者は楽しみながらツールの使い方を学べます。エンターテイメントと実用性を両立させた、優れたコンテンツマーケティング事例といえるでしょう。
PERSOL|若者の葛藤を描く共感型ドラマ
人材サービス大手のPERSOL(パーソル)は、就職活動や社会人生活をテーマにしたショートドラマをTikTokで展開しています。
このドラマシリーズは、キャリア選択に悩んだり、仕事で壁にぶつかったりする若者の姿を、リアルな視点で丁寧に描いているのが特徴です。
視聴者が自身の経験と重ね合わせ、「これは自分の物語だ」と感じられるような、強い共感を呼ぶストーリーテリングが見事に描かれています。
実際にコメント欄には、視聴者からの実体験や応援のメッセージが多数寄せられました。
ブランドがユーザーと感情的なつながりを築き、ファンコミュニティを形成した好事例と言えるでしょう。
カルビー|UGCを誘発する青春あるあるドラマ
スナック菓子メーカーのカルビーは、人気商品「じゃがりこ」をテーマにした学園ショートドラマを展開しています。
このシリーズは、商品を特定のシーンで「あげる」行為を「あげりこ」と名付け、新しい文化として提案している点が独創的です。
友情や恋愛といった、誰もが経験する学校生活の「あるある」な瞬間に商品を絡めることで、視聴者に親近感を抱かせています。
この「あげりこ」のキャッチーなコンセプトが、視聴者による関連投稿(UGC)を誘発しました。
企業発信のコンテンツがユーザーを巻き込み、大きなムーブメントを生み出した、非常に戦略的な事例です。
バズるショートドラマに共通する4つのポイント

先ほど紹介した成功事例には、視聴者の心を掴み「バズ」を生み出すための共通点が存在します。
なぜこれらのショートドラマは多くの人々に受け入れられ、拡散されたのでしょうか。その裏には、しっかりと考えられた4つのポイントがあります。
具体的なポイントは、以下のとおりです。
- 冒頭3秒で惹きつける導入
- 共感と意外性を両立する脚本
- コメントを誘発する仕掛け
- 広告感を消し去るメッセージ性
それぞれのポイントを確認していきましょう。
冒頭3秒で惹きつける導入
ショートドラマをバズらせるための絶対条件は、冒頭のわずか数秒で視聴者の心を掴むことです。
TikTokなどのプラットフォームでは、ユーザーは興味がなければ瞬時に次の動画へスワイプしてしまうからです。
そのため、物語の冒頭で「これは面白そうだ」「続きが気になる」と思わせる必要があります。
視聴者の心を掴む導入には、いくつかのパターンがあります。
衝撃的なセリフや事件から始める | 「いきなり何!?」と驚かせる |
視聴者に問いかける | 「もしあなたがこの立場だったら?」と考えさせる |
最も面白いシーン(サビ)を見せる | 物語のクライマックスを冒頭に持ってくる |
最初の数秒間に全力を注ぐことで、視聴維持率を高めやすくなるでしょう。
共感と意外性を両立する脚本
視聴者を惹きつける脚本には、「共感」できる設定と「意外性」のある展開の、両方が含まれています。
共感だけでは「よくある話」で終わってしまい、意外性だけでは「自分には関係ない話」と他人事に感じられてしまうからです。
視聴者が「これは自分の物語かも」と感じる共感できる設定の上に、予測を裏切る展開があるからこそ、物語に強く引き込まれていくのでしょう。
この二つの要素を両立させるには、以下のような工夫が有効です。
- 誰もが経験するような「職場のあるある」や「恋愛の悩み」をテーマにする
- 共感できる状況の中で、登場人物が予想外の行動を取ったり、衝撃の事実が発覚したりする
共感で視聴者の心に寄り添い、意外性で心を揺さぶることが、記憶に残り、人に話したくなるような魅力的な脚本の条件です。
コメントを誘発する仕掛け
バズるショートドラマには、視聴者が思わずコメントしたくなるような「仕掛け」が意図的に盛り込まれています。
コメント数やエンゲージメント率は、TikTokのアルゴリズムでは重要な評価指標です。コメント欄が盛り上がっている動画は「価値の高いコンテンツ」と判断され、さらに多くのユーザーの「おすすめ」フィードに表示されやすくなります。
視聴者からのコメントを引き出すための、具体的な仕掛けは以下の通りです。
- あえて結末を曖昧にし、「この後どうなる?」と予想させる
- 登場人物の少しおかしな行動やセリフを入れる
- 「みんなならどうする?」と視聴者に意見を求める
視聴者がただ見るだけではなく、参加したくなるような「余白」を作ることが大切です。
広告感を消し去るメッセージ性
成功しているショートドラマは、企業や商品のメッセージを、広告と感じさせない自然な形で物語に溶け込ませています。
ユーザーは、あからさまな宣伝や売り込みを嫌う傾向にあるからです。
「広告だ」と認識された瞬間に興味を失い、心を閉ざしてしまいます。物語を通じてブランドの価値観や世界観を伝えることで、視聴者は自然と好意を抱いてくれます。
広告感を消すための具体的な手法は、以下のとおりです。
- 登場人物の悩みを、商品が解決する様子を描く
- 企業の理念やビジョンを、登場人物の行動やセリフで示す
- あえて商品名を伏せ、コメント欄で「これって何?」と話題にさせる
伝えたいメッセージを物語の背景に置くことが大切です。これにより、視聴者は楽しみながら、無意識のうちにブランドに対して良い印象を抱くでしょう。
ショートドラマをバズらせるための作成の流れ

思いつきで作り始めても、バズる動画を作ることはできません。
しっかりと段階を踏む作成の手順で作っていく必要があります。
ショートドラマの制作は、大きく分けて3つの段階で進めていきます。
- 目的とターゲットを定める企画段階
- 脚本から撮影まで行う制作段階
- 配信後の効果測定と改善の段階
各段階で何をすべきかを把握し、一つずつ確認していきましょう。
目的とターゲットを定める企画段階
制作を始める前に、まず「誰に、何を伝え、どうなってほしいのか」などの目的とターゲットを明確に定義しましょう。
企画段階が、プロジェクト全体の方向性を決める土台となります。
目的が曖昧だと、途中でメッセージがぶれたり、誰の心にも響かない動画になったりするからです。ターゲットが明確であれば、その人たちの心に刺さるテーマや設定を選ぶことができます。
企画段階で決めておくべき項目は、以下のとおりです。
目的 | ブランドの認知度向上か、商品購入か、ファン作りか |
ターゲット | 年齢、性別、興味関心、抱えている悩みなど |
コアメッセージ | ドラマを通じて最も伝えたいテーマ |
KPI | 目的の達成度を測るための具体的な数値目標(再生回数、コメント数など) |
制作に入る前にはしっかりとした土台を固めておく必要があります。この企画段階でバズるドラマになるかどうかが決まります。
脚本から撮影まで行う制作段階
企画が固まったら、次はその設計図を基に、脚本、撮影、編集といった制作段階に入ります。
この段階は、企画段階で描いたアイデアを、実際に視聴者に見える「映像」として形にしていくプロセスです。一つひとつの工程の品質が、最終的な動画のクオリティにつながります。
制作段階の主な工程は、以下のとおりです。
脚本作成 | 企画意図を反映し、セリフやシーン展開を具体的に書き出す |
撮影準備 | キャストやロケーション、機材などを手配する |
撮影・編集 | 脚本に沿って撮影し、テンポや音楽を加えて魅力的な動画に仕上げる |
上記のように、企画意図を正確に映像化していく過程が大切です。品質にこだわり、視聴者の心を動かす動画制作を目指しましょう。
配信後の効果測定と改善の段階
動画を配信した後は、その成果をデータで測定し、次につなげるための改善を行う必要があります。
配信して終わりでは、何が良くて何が悪かったのかが分からず、次回の成功確率を高めることができません。
データに基づいた客観的な分析と改善を繰り返すことで、自社ならではの「バズる法則」を見つけ出せるでしょう。
具体的にチェックすべきデータは、以下のとおりです。
視聴維持率 | どこで離脱されているかを確認し、次回作の脚本に活かす |
エンゲージメント率 | 「いいね」やコメントが多い動画の共通点を探る |
視聴者のコメント | 寄せられた感想や意見を、次の企画に活かす |
配信後のPDCAサイクルを回し続ける必要があります。
継続的に制作を重ねることで、次第にバズるコンテンツが作れるようになるでしょう。
まとめ|ショートドラマをバズらせるにはポイントを把握して作成が大切
今回は、ショートドラマがなぜバズるのかの理由から、具体的な成功事例、そして成果を出すための共通ポイントと作成の流れまでを解説しました。
ショートドラマで「バズ」を生み出すためには、ただ動画を作るだけでは不十分です。現代の視聴スタイルやSNSの特性を理解し、視聴者の心を掴むポイントを押さえた上で、戦略的に制作を進める必要があります。
この記事で紹介した数々のポイントや成功事例を参考に、まずは「誰に、何を伝えたいか」などの企画から、ショートドラマ制作にチャレンジしてみましょう。